大電流エネルギー工学 ●電力システム・大電流工学・低温工学
環境低負荷型の電気エネルギー変換・伝送技術の探求
まつむらとしろう
松村 年郎
電子情報システム専攻
電気工学分野
エネルギーシステム講座
大電流エネルギー工学研究グループ
教授

主な研究と特長

 現在の社会生活は,エネルギーの安定した供給によって支えられている.とくに電気エネルギーの役割は重要であり,情報化社会の高度化に伴い,それを支えるために,電気エネルギー供給システムでは,量的な安定供給と高品質で信頼性の高い供給とが追求されている.さらに21世紀の人類に夢のある生活を保障するためには,地球・生物環境に負担をかけないという観点からの新しい電気エネルギー供給システムの構築・新技術の開発が重要である.

 以上のような観点から,超伝導テクノロジーの導入による電気エネルギー伝送システムの革新,大電力・大電流スイッチングの物理的本質像の解明,大規模電力システムと小規模分散電力システムとの融合など,新しい視点から電気エネルギー変換・伝送・利用技術の研究を行っている.

  1. 環境調和型ハイブリッド限流遮断システムの構築

 電気エネルギー伝送システムの信頼性を高めるためには,万一の故障発生時に確実に故障電流を遮断しなければならない.この大電流遮断アーク現象の解明を超高圧から配電レベルに至るあらゆる電圧階級を対象として進めている.その一環として,地球・生物環境へ負担をかけないと言う観点から新しいアーク消弧媒体・消弧方式の開発をめざした研究を行い,SF6レスガス遮断器と限流器との融合技術の可能性を研究している.

  1. 超高温アークプラズマ応用

 大電流アーク遮断はアークプラズマの消滅過程を制御する技術であるといえる.他方,この大電流アークプラズマ放電はガス温度1万度以上という超高温を容易に実現できる.この特性を積極的に利用する技術の開発も進めている.アークプラズマ中ではすべての物質は原子・イオンに分解されるため,産業廃棄物・有害物質の減容・無害化処理に有効であるとともに,新しい複合機能材料生成の可能性を秘めている.このような応用面を目標として,各種原子が混入したアークプラズマの基礎物性(熱力学的特性,輸送特性,電圧・電流特性,放射特性,電極現象)の解明を試みている.

  1. 超伝導電力システムの構築

 将来の電力システムでは,地球への負荷を小さくするという省資源化という観点から,機器そのものの高効率化技術の開発,およびシステム全体としての信頼性をさらに高める技術の開発がますます重要となってくると考えている.現在の電力システムを支えている個々の技術を高度化するという地道な研究開発を進めていくとともに,我々研究者にとっては,新しい電気エネルギー伝送システムの構想も考えておく必要がある.我々は,液体窒素冷却の超伝導電力システムに注目している.超伝導電力システムは本質的には大電流による電力伝送を可能にするものであり,新しい電流協調と言う概念を提案し,そのキーテクノロジーとして限流技術に注目している.この新しいシステムを実現するために,その基礎テクノロジーの蓄積を目的として研究を進めている.

 現在は液体窒素冷却レベルの酸化物高温超伝導体を主体として,特にその超伝導・常伝導状態間の相互の遷移メカニズムの解明,交流通電損失の評価,磁束流抵抗発生・消滅過程の解明に取り組んでいる.

  1. 大規模システムと小規模システムとの融合技術

 現在の電気エネルギー伝送システムは地球上での最大のシステムであり,21世紀に実現が期待されている超伝導応用電力システムや核融合発電システムもこのような大規模システムに分類される.他方,太陽光発電や風力発電など自然エネルギーを利用した分散システムの開発も期待されている.そこで,大規模システムと小規模分散システムとの相互干渉を解明し,両者を融合して総合的に地球環境に負担をかけない複合システムを構築するための基礎研究を行っている.

今後の展望

 地球・生物環境に優しい電気エネルギー伝送システムの一つとして,液体窒素冷却の超伝導電力システムは,我々にとって理想的なシステムとなりうる資質を有していると考えている.この新しいシステムの実現および分散型小規模システムとの複合化に向けて,要素技術・システム技術の開発を進めていく.

経歴

1974年名古屋大学工学部電気学科卒,79年同大学大学院工学研究科博士課程後期課程単位取得退学,同大学工学部助手.81年博士(工学),87年同大学講師,89年京都大学工学部講師,92年名古屋大学工学部助教授,95年同大学教授,97年同大学大学院工学研究科教授

所属学会

電気学会,応用物理学会,日本リモートセンシング学会,資源・エネルギー学会,IEEE.

主要論文・著書
  1. Design Guideline of Flux‐Lock Type HTS Fault Current Limiter for Power System Application, IEEE Trans. on Applied Superconductivity, Vol. 11, No. 1, pp.1956‐1999 (2001)
  2. Influence of Air Flow Velocity Distribution on Current Interruption in Flat‐Type arc Quenching Chmber, VACUUM, Vol. 59, pp.98‐105 (2000)
  3. Particle Composition of High‐Pressure SF6 Plasma with Electron emperature Greater than Gas Temperature, IEEE Trans. on Plasma Science, Vol. 25, No. 5, pp. 991‐995 (1997)
  4. Development of Flux‐Lock‐Type Fault Current Limiter with High‐Tc Super‐conducting Element, IEEE Trans., on Applied Superconductivity, Vol. 7, No. 2, pp. 1001‐1004 (1997)
  5. A Prediction of River Flow Rate Into a Dam for a Hydro Power Plant by Artificial Neural Network Trained with Data Classified According to Total Amount of Rain, International Journal of Power & Energy Systems, Vol. 16, No. 1, pp. 11‐15 (1996)
  6. Quench Current‐Time Characteristcs of Four Kinds of Superconducting Cables, Cryogenics, Vol. 36, No. 6, pp. 447‐455 (1996)
  7. Prediction of Circuit‐Breaker Performance Based on a Refined Cybernetic Model,IEEE. Trans. on Plasma Science, Vol. 14, No. 4, pp. 435‐443 (1986)